「英語を話せるようになりたい」と思ったとき、多くの人がまず検討するのがオンライン英会話だ。月数千円で外国人講師と話せる。手軽さは間違いなく魅力的だ。
しかし「話せるようになりたい」という目的に対して、オンライン英会話は本当に最適な手段なのか。できることとできないことを、整理してみる。
■オンライン英会話が得意なこと
オンライン英会話の最大の価値は、「実際に話す場」を強制的に作れることだ。予約した時間に講師が画面の前にいる。逃げ場がない状況で、英語を口に出さざるをえない。
この「話さなければならない環境」は、独学では作りにくい。一人で英語を勉強していると、声に出す機会は意外と少ない。オンライン英会話は、その機会を確実に確保してくれる。
また、リスニングの実践練習としても優れている。教材の音声とは違い、相手の反応を見ながら聞く、聞き返す、確認するという生きたコミュニケーションを経験できる。度胸をつける、英語への抵抗感を減らすという意味でも効果が大きい。
■オンライン英会話が苦手なこと
一方で、オンライン英会話には構造的に苦手な領域がある。
ひとつは、基礎的な「変換回路」を鍛えることだ。25分や50分のレッスン中、講師との会話は基本的に即興だ。事前に「この日本語をこう英語にする」という練習を反復する時間ではない。話す内容も、その場のやり取りに依存する。
つまり、オンライン英会話は「すでにある程度英語を組み立てられる人」が実践する場としては優秀だが、「日本語を英語に変換する力」そのものを鍛える場としては効率が悪い。会話中に詰まったとき、その場で答えを教えてもらえることは少なく、結局自分で次の表現を探さなければならない。
もうひとつは、繰り返しの管理だ。同じ文を何十回も練習する、間違えた表現だけを集中して復習する、といった反復学習は、会話のレッスンには向いていない。レッスンは流れていくので、苦手な部分だけを抜き出して練習し続けることが難しい。
■「話せない」の正体に合っているか
多くの人が「話せない」と感じる本当の原因は、日本語を英語に変換する回路が育っていないことにある。単語や文法を知っていても、とっさに英語に変換できない。これは「話す機会の不足」というより「変換練習の不足」だ。
オンライン英会話だけでこの問題を解決しようとすると、時間がかかる。会話の中で同じ表現に出会う頻度はランダムで、自分の弱点を効率的に潰していく構造にはなっていないからだ。
■組み合わせるという発想
最も効果的なのは、オンライン英会話と変換練習を組み合わせることだ。
変換練習で「日本語→英語」の回路を鍛えておき、オンライン英会話でその回路を実際の会話の中で使ってみる。鍛える場と使う場を分けることで、それぞれの効率が上がる。
英訳道場のような英訳練習は、まさに「変換回路を鍛える」ための場だ。オンライン英会話の前に、こうした練習で基礎を作っておくと、レッスン中に詰まる場面が減り、会話自体の質も上がっていく。
「話せるようになりたい」という同じ目標でも、今の自分に必要なのが「話す機会」なのか「変換練習」なのかを見極めることが、遠回りを避ける近道になる。