大谷翔平の通訳を務めた水原一平氏の存在が広く知られたことで、「スポーツ通訳」という仕事への関心が高まっている。海外で活躍する日本人選手のそばで、英語と日本語の橋渡しをする仕事は、どうすれば目指せるのか。

■スポーツ通訳の仕事内容

スポーツ通訳の仕事は、試合中継のアナウンスを訳すようなものではない。選手が監督・コーチ・チームメートと交わす日常的なコミュニケーションを、リアルタイムで橋渡しする仕事だ。

練習中の指示、試合前のミーティング、記者会見、契約交渉、医療機関での説明、移住先での生活手続き。扱う内容は多岐にわたる。語学力だけでなく、スポーツへの深い理解と、選手との信頼関係が求められる。

水原氏のケースを見ても分かるように、専属通訳は選手の「右腕」に近い存在になることが多い。英語力はあって当然として、それ以上の人間的な信頼が重要になる仕事だ。

求められる英語力のレベル

スポーツ通訳に求められる英語は、試験で測るような英語とは少し異なる。

会議通訳のように完璧な同時通訳ができる必要はないが、監督が瞬時に発した指示を正確に、かつ選手に伝わる言葉で訳す力は必要だ。また、ロッカールームでのくだけた会話から、契約書の内容確認まで、幅広い場面に対応できる柔軟性が求められる。

英語圏での生活経験(留学・海外居住)がある人が多く採用されているのは、語学力だけでなく「文化的な文脈の理解」が不可欠だからだ。同じ言葉でも、アメリカ人が使うときのニュアンスと辞書に載っている意味は違う。その差を埋める感覚は、現地で生活しなければ身につかない部分がある。

どうやってなるのか

スポーツ通訳の求人は、一般的な就職市場にはほとんど出ない。多くの場合、選手やチームとの個人的なつながりから生まれる仕事だ。

現実的なルートとしては、以下のようなものがある。

①スポーツ関連の現場で働きながら英語力を磨く
球団のスタッフ、スポーツエージェントのアシスタント、メディアの制作スタッフなど。英語が使える環境でスポーツ業界に関わり続けることで、機会が生まれやすくなる。

②留学・ワーホリで語学力と現地経験を積む
英語圏の大学でスポーツマネジメントやコミュニケーションを学ぶルートも有効だ。現地のスポーツチームでインターンをした経験が、就職につながるケースもある。

③通訳・翻訳の資格を取る
直接スポーツ通訳につながるわけではないが、通訳の基礎技術を身につけることで、仕事の幅が広がる。TOEIC900点以上、英検1級などの資格も、語学力の証明として有効だ。

英語力よりも大切なこと

通訳として採用されるかどうかを最終的に決めるのは、英語力よりも信頼性だ。選手の個人的な会話や契約内容、医療情報を扱う立場上、絶対に情報を外に漏らさないという信頼が必要になる。

また、選手のパフォーマンスに影響を与える存在になる以上、スポーツに対する本物の理解と熱量も求められる。英語が話せる人はたくさんいる。その中で選ばれるのは、英語力プラスアルファを持つ人間だ。

英訳練習がどう役立つか

スポーツ通訳を目指す上で、日本語を瞬時に英語に変換する力は基礎中の基礎だ。監督の指示を訳すとき、選手のコメントを記者に伝えるとき、一言一句考えている時間はない。

日本語を見て英語に直す練習を繰り返すことで、この「瞬発力」が鍛えられる。英訳道場のビジネスカテゴリやスポーツカテゴリには、実際の通訳場面でも使えるフレーズが多く収録されている。夢を持って英語を学ぶ人に、ぜひ活用してほしい。